三瓶啓二
極真を語る上で、三瓶啓二、この人を語らないわけにはいかないだろう。
このかたは、現在新極真会の福島支部長をしている。
そして、1980年の第12回から14回までの全日本大会で優勝し、史上初の全日本大会を3連覇した人物である。
そのすさまじいバリの努力においては、いろんな伝説が残っている。
福島から東京に上京し、早稲田大学の2部学生として勉学に励む傍ら、いろんなバイトをこなし、修練をこなし、1日の睡眠時間は3時間しかしなかったといわれる。
そして、自主トレも毎日必ずこなし、こんなエピソードが残っている。
「三好一男と三瓶啓二が夜を徹して酒を飲み、朝に目が覚めると、傍に寝ているはずの三瓶啓二がいない。どんなに酒を飲んでも三瓶は早朝に自主トレをするという努力を怠らなかったのだ。」
そんな努力が実り、三瓶氏は史上初の3連覇を成し遂げたのだといえる。
しかし、三瓶氏は、最初から空手をする素質があり、デビュー戦から順風満帆だったのだろうか?
決してそうではない。
極真空手の創始者である大山倍達総裁が生きておられたころ、『月刊パワー空手』において、「正拳一撃」という、読者から大山総裁に向けた質問があり、その質問に対して大山総裁が応えるというコラムがあったのだ。
その『月刊パワー空手』の某号の「正拳一撃」において以下のような質問があった。
「私は生まれつき体が硬いです。そんな私が空手をやっても強くなれますか?」
というものだった。
それについて大山総裁は、
「史上3連覇を成し遂げた三瓶君も生来体が硬い。
今でも股割りをさせても、ぴたっとは足がつかない。
それでも彼は努力を重ねて、あそこまでやった。
だから体が硬くても強くなれる。
素質じゃないよ。
努力だよ。」
ということであった。
これを読んで驚いただろうか?
私は驚愕の思いになった。
それに三瓶師範は、最初からセンスのいい組手をしていたわけではなかったのだ。
第6回全日本大会において、世界大会初代王者になる佐藤勝昭氏とも4回戦で対戦しているのを知って私は驚いたが、その時のエピソードを勝昭氏の自叙伝で知ることができるのだ。
佐藤勝昭
そこにはこう書いてある。
「彼は茶帯だったが後年のブルファイターぶりはその当時から目立っていた。
まだ大した技も持っていなかった。
しかし一歩も下がらずに前へ前へと出る試合ぶりでここまで勝ち上がっていった。
だが私と対戦した時は、私の迫力に気後れしたのか後退する場面が多くしばしば場外に出てしまう。」
ということであった。
しかし三瓶師範は、楽観主義を心に留めて、稽古に次ぐ稽古で自信をつけ、勝ち上がることができるようになったのだ。
これを読んで奮発しない人がいるだろうか?
また、以下の事柄にも注視していただきたい。
松井章圭(極真会館松井派館長)氏が現役時代、3たび勝てなかった、要するに3回やって3回とも勝てなかった人物は誰だろうか?
ほかならぬ三瓶啓二氏その人なのである。
これも驚きだろうか?
80年の第12回と第13回全日本大会の準決勝と、第3回世界大会のいずれも準決勝で松井章圭氏は三瓶師範に敗れて1度も勝てなかったのだ。
しかしいずれの敗戦も、松井氏が10代の後半から20代の初期だったこともあり、それがそのまま選手としての相対的な実力による敗北とはみなさない。
それに周知のように、松井氏は第17回と第18回全日本大会において連覇を果たし、その次の年の世界大会では優勝している。
選手生活で一番脂がのっているときは、20代半ばから後半なのが一般的である。
やはり技術的な進歩が上がれば、どうしてもその面ばかりに意識が行ってしまう。
それで、格闘技の基本である体力をつけることをおざなりになってしまうのだ。
しかし三瓶師範は、基本を磨くことを忘れなかったのだ。
体力とは何も筋トレだけではない。
基本稽古や移動稽古、自重のトレーニングの積み重ねによって空手に必要な体力を身に着けることができるのだ。
その後輩である松井章圭氏は、そういった体力を生前から持ち合わせていたがために、それに関する重要性を語ることは稀かほとんどない。
やはり彼の組み手を特徴づけるのは「華麗さ」であろう。
きれいな組み手をすることにどうしても意識がいってしまうのだ。
それがゆえに、93年に突如鈴木国博が頭角を現してきた頃に、三瓶師範は、鈴木選手に対して、前に出る組手を称賛したが、松井氏は「君の組手は汚い」と物言いをつけたのだ。
その違いが、やはり現在の松井派の選手と、新極真会の選手の違いを生み出してしまっているのだとしか思えない。
松井派の選手はきれいな組み手をする人が多いけれども、ゆえに素質のない人は強くなれないという誤った思いを抱く人が多く、しかも圧倒的な破壊力を持っている人が少ないために、盤石な強さを得ている人が少ないし、予想通りの勝ち上がり方しかない。
しかし新極真会の選手は、破壊力を最初にありきで稽古している人が多いために、誰もが楽観主義で稽古に励み、盤石な強さを得ている人が多く、ゆえに予測不可能な勝ちあがり入賞者リストになることが多い。
どちらで稽古したいと思うだろうか?
多くの人が後者で稽古したいと思うのは間違いない。
確かに華麗な、きれいな組み手をするのもいいだろう。
それのほうが、見るほうにアピールしやすいのは当然である。
しかしそのような組み手が最初からできる人は稀である。
それに、最初に組手のきれいさが最初にありきでは絶対に強くなれないし、進歩を妨げるのは間違いない。
やはり大山総裁のひざ元で、正当な理論を持つことによって、またそれによっていい意味での楽観主義的な思いを得ることができて、稽古にいそしむことができるのは言うまでもない。
もし、先に書いたように、佐藤勝昭氏と対戦したころの三瓶師範のような選手が出てきたら松井氏や松井派の師範たちはどのようなアドバイスをしただろうか?
もっと~をしろといったようなテクニック的面でのアドバイスをしたのではないだろうか?
そういう部分も必要であるのは間違いないが、それだけでは健全な前進方法にはなりえない。
もっと破壊力をつけるようにする。
すると、相手が後退し、そこにスキが生まれ自分の技が決まりやすくなるのだ。
それでいろんな技が入る。
そしてその後、こんな技はどうだろうか、あんな技を出したらどうだろうかといった疑問が生まれ、更に修練に励むようになるのだ。
空手に限らず、こういうように、あきらめずにやり抜くと、いろんなことが相乗的にうまくいきだすのだ。
ただし正当な理論をもってしてであることは強調しておきたい。
闇雲に我流でやっていては強くはなれない。
周知のように95年に極真空手は分裂した。
松井章圭氏を支持する派と反対する派に大きく分かれた。
三瓶師範は、松井氏に反対する派についた。
その分裂の詳細については以下のページを読んでいただきたい。
↓
『極真分裂20年を振り返る』
http://blog.livedoor.jp/hammerdc/archives/9474604.html
三瓶氏と松井氏は総本部の先輩と後輩の間柄であるが、知り合ったころから仲は芳しくなかった。
当時の総本部では、他の支部から来た人は、たとえ茶帯であろうと、白帯から始めなくてはいけないという不文律があった。
しかし、松井氏はたぐいまれなる資質を大山総裁から買われ、千葉北支部から茶帯できてもそのまま茶帯から始めるのが許されたという。
それに大いに憤慨したのも無理はない。
それに、モラルの面で三瓶氏と松井氏は互いに受け入れがたい面があったらしく、三瓶氏が呑むとよく松井氏の陰口をたたいていたという。
そのどちらにつくかは私は当事者ではないので、コメントは避けたい。
しかし、そのようにモラルの面で受け入れがたいことがあったとしても、世話になった先輩である。
敗北を喫したことで奮起するきっかけにもなったのは間違いない。
そういった面でも恩義があったはずである。
分裂後に、自分には対する派に行ってしまった先輩とともにまた一緒にやっていこうという気概を持てなかったのかなあ松井氏は?という気がするのは私だけであろうか?
三瓶氏と、仲の良かった三好一男氏も同じように、「1支部長としてやり直してくれないことには松井君を受け入れるわけにはいかない。」と言っていたのを思い出す。
同じような意見であった支部長は多くいた。 私がそのような意見を持っている支部長が多くいたことを知ったら、私は館長としての資質がないんだと自覚し、その意見を受け入れ、1支部長としてやり直すだろう。
しかし松井氏は、支配欲のほうが大きかったようだ。
ゆえに反対派とは歩み寄りを一切せず、館長として座り続けている。
しかし私は、館長としての資質のみならず、恩知らず恥知らずな松井氏を受け入れるわけにはいかない。
自分の元師匠や元先輩である支部長たちをいとも簡単に除名にし、会員には、いらない出費をさせて自分は超裕福な生活をしている。
ゆえに私は松井氏を受けれないのである。
その詳細については先と同じページを読んでもらいたい。
↓
http://blog.livedoor.jp/hammerdc/archives/9474604.html
私は三瓶師範の伝説を知るにつけて、氏の自叙伝を読みたいという気概を持たざるを持たざるを得なかった。
しかし、大山総裁の生前は、そういった書籍を出すには大山総裁の許可を得なければ出せなかったのだ。
しかし、三瓶師範は残念ながら大山総裁からは許可を得ることが出なかった。
しかし、三瓶師範の伝説について書いてある雑誌の断片をつなぎ合わせることしかできなかったがそれでも、その集積は空手を志す人には必ず勇気を奮い起こすことができると信じている。
何をきっかけに空手を始めたか。
どのような気概で空手にいそしんだか。
どのくらい稽古したか。
そういう内実を知るだけでかなりの程度奮起するはずである。
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