前回は、極真会館松井派の今年の全日本大会で見事優勝した安島喬平選手についてリポートしました。
安島喬平選手
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私が感動したのは、自分よりも実績で勝る相手に果敢に攻めていって勝利をモノにしたということを書きました。
●こういった例で別例を挙げろと言われて、最適なのは、やはり21年前の第24回全日本大会でしょう。
この時は、今日の極真空手のようにいろんな派が林立していなくて、大山倍達総裁のもと、極真が1つになっていた時のことです。
その全日本大会の3回戦で異変が起こりました!
昨年の世界大会で準優勝した増田章選手が敗れたのです。
増田章
相手は、城南支部の数見肇選手でした。
この試合の観戦していた私は、 「当然増田選手が勝つだろう!」とタカをくくっていました。
しかし、増田選手は相手の攻撃の強さに攻めあぐねて、なかなか試合を自分の思うように引き込むことができなくなっていました。
それどころか珍しく、相手の攻撃に過敏に反応して素早いフットワークで横に回る場面も出てきました。
数見選手の攻撃が強かったのでしょう。
決定打はなく,本戦は引き分け。
そして、延長戦も同じような展開で引き分け。
初出場の、しかも20歳の選手に昨年の世界大会準優勝者がここまで手こずるとは、会場にいた誰もが予想すらしていなかったでしょう。
今度の延長戦こそ、増田選手が決着をつけるだろうと踏んでいましたが、そうはなりませんでした。
試合の中盤以降、増田選手は、相手の数見選手の攻撃に効いたか、スタミナが切れたかはわかりかねますが、相手にもたれかかってしまい、しかも出す突きは脇のあいたパンチでしかも威力で相手に負けていたので、どうにも印象が悪いです。
数見選手も、相手が相手だけに、しかも延長2回ですから息が上がっているのがわかりましたが、それでもきっちりと反撃ができているのがわかります。
それ以降、数見選手の良い下段蹴りが何度も増田選手の脚をとらえ、そのたびに会場から歓声が沸きました。
試合終盤直後に、良い下段が決まり、増田選手がガクッと態勢を崩しました。
そして試合終了の太鼓。
これで会場の観衆の誰もが数見選手の勝ちであると思ったでしょう。
しかしそうはならず、数見選手を支持する旗は1本のみで、会場からは、「ええっ~!!?」という「なぜ数見の勝ちでないの?」という意味のこめられた溜息が会場にこだましました。
やはり、実績をこれまであげてきた人はどうしても贔屓目で見られてしまう、という特権があるのですね。
しかし、体重では10キロ以上の差はなく、試し割りでは5枚の差があり、数見選手の価値が宣告され、会場には万雷の拍手がこだましました。
数見選手の快進撃はそれだけでは止まらず、その次の4回戦で三明広幸、次の準々決勝で石井豊、準決勝では七戸康博といずれも昨年の世界大会で出場した選手を下し、決勝進出を果たしました。
しかも、増田、石井、七戸の3氏はいずれも前年の世界大会の入賞者でした。
こんな例は、後にも先にもありません。
決勝では、惜しくも敗れてしまいましたが、20歳の若さで、しかも初出場で全日本大会の決勝にまで進んだのは、数見選手が史上初でした。
しかし、次の年には全関東大会でぶっちぎりの強さで優勝し、続く全日本ではついに優勝します。
しかも、史上最年少の記録でです。
●この後の快進撃は周知のとおりで、その優勝した全日本の次の年では準優勝、これで世界大会の切符を手に入れ、その次の年の世界大会では史上最強の外国人選手であったフランシスコフィリョを準決勝で破り、日本優勝の大役を果たしました。
そして、それ以降の3度の全日本ではすべて優勝し、次の世界大会でも決勝に進み、惜しくも宿敵のフランシスコフィリョに試し割り判定で敗れてしまいましたが準優勝になりました。
その3年後にけがのために休止していた生活から這い上がり、再び選手になって全日本に出場します。
そして、右足に重大な怪我を負っていたにもかかわらず、決勝に進み、見事優勝します。
次の年の世界大会での活躍を期待されていたにもかかわらず、惜しくもけがの多い身体に限界を感じ、選手を引退し、極真会館を辞め、今は「空手道数見道場」の館長をしておられます。
●こんなすごい記録を持つ数見選手ですが、あのかたの活躍のターニングポイントは、やはり24回全日本大会にあったといえるでしょう。
自分より断然実績で勝る相手を精神的にもろともせず、果敢に攻めていって勝利をモノにする精神です。
確かに、これまでの空手選手のキャリアが長い選手には、試合運びの上手さで劣ってしまうこともあるでしょう。
例えば、キャリアの短い選手では通常の受けで対処するところを体捌きで躱され、それで態勢を崩されてしまう。
あるいは予期せぬ場面でカウンターを合わされてしまい効かされてしまう。
あるいは、予期せぬ動きをされ対処に困ってしまう。
また、予期せぬ場面で予期せぬ角度から技を出されて困惑してしまう。
こういったこと以外にも、キャリアの年数で劣る場合には多々困惑する場面があると思いますが、
空手の試合ではどういう人間が勝つのか?
を考えれば、そういったことに惑わされずに試合を自分に運ぶことができるのです。
●空手に必要なトレーニングは、スタミナ、スピード、パワー、テクニック、手数…etcといろいろありますが、これを自分の満足するレベルに上げてから試合で勝とうなどとは思わないことです。
また、これらのどれを重点的に稽古していけばいいかがわからず、闇雲にただ突き進んでいる人も多いでしょう。
それでは、上手くいかずにスパーリングでもうまくいかずに、「これまでの自分の練習は何だったんだ…」と落胆するでしょう。
そのせいで稽古から遠ざかってしまうでしょう。
そうではなく、まず攻撃力を磨きましょう!
「へえ?」と思われるかもしれませんが、これは古来の名選手たちの稽古の基本でありました。
初めはそれで上手くいかないこともあるでしょう。
しかし、それでも我慢に我慢を重ねて攻撃力中心の稽古を積んでいくと、いつの間にかスパーリングがうまくいくようになり、稽古が楽しくなるのです。
すると、更に稽古を重ねるようになり、さらなる技術力アップ、スタミナアップが見込まれ、いつの間にか強豪の仲間入りをしていたりするのです。
●先の安島喬平選手にしても数見肇選手にしても、共通するのは、精神的な
「楽観主義」
でした。
難しく考える必要はなく、最初に攻撃力の向上ありきで稽古を重ねていった結果が、先の実績の結果になりました。
先輩や、自分よりもこれまでの試合実績で勝る相手に果敢に攻めていき、勝利を手にする…強い人間をめざす人には、こういった精神を学んで…いや「学ぶ」などという堅苦しい言葉を使わないで、「真似」してもらいたいものです。
これからの参考にしていただきたいものです。
今回のブログはこれにて終了いたします。
ここまでの精読に感謝いたします。
●その数見選手についてもリポートした商材がコチラ!
↓
http://karate-rush.info/index.html