前回は、ギャリー.オニール(極真会館.松井派-第6回世界大会4位、全日本大会2回準優勝)を引き合いに出し、彼の身長171センチ、体重72キロという値は、他の選手たちと比べて低いにも関わらず、あれだけの実績を出せたのは、彼は全技が強烈で、しかも打たれ強く、いろんな上段が延長になっても蹴れて、ステップワークが巧妙という特徴だったが故であった、ということを話しました。
ギャリー.オニール
彼のように、このような特徴を備えた人であるならば、あのくらいの身長と体重でも構わないということですが、そうでない人が彼のようにステップを使って逃げても間合いを詰めてボコボコにされるだけですから注意が必要です(笑)。
でも、彼にあこがれて真似をする人が良くあったのは事実です。
でもうまくいかない人がほとんどであった…。
それはなぜか?
当時の雑誌を見て答えを出しましょうか。
極真会館.松井派の機関紙である『ワールド空手』の98年11月増刊号の『極真空手最先端テクニック』を見ると、ギャリーのステップの強化法について掲載されています。
そこには、10種類のトレーニング方法があります。
以下紹介しましょう。
直径1mの円に沿って相手を追いながらタッチする
直径1mの円に沿って相手を追いながらタッチし、正面での追い突き
正面から前進してくる相手をステップで躱す
正面から前進してくる相手をステップで躱し、パンチを当てる
正面から前進してくる相手をステップで躱し、下段蹴りを入れる
正面から前進してくる相手をステップで躱し、パンチと下段蹴りを入れる
正面から前進してくる相手をステップで躱し、無制限で返し技を入れる
正面から前進し正拳突きで攻撃してくる相手をステップで躱しパンチで返す
正面から前進し下段で攻撃してくる相手をステップで躱し、下段を入れる
狭い間合いで直前に躱し、パンチや膝蹴りで攻撃する
以上ですネ。
彼のトレーニング熱心さが伺われる内容ですね。
合同稽古の合間を縫って、これまでの経験値から割り出し、このようなトレーニングが必要と感じて、それを日課にしていたのですから。
しかし感心する一方、不感心なことがありました。
これには、彼の技の威力の強化方法については一切言及していないのです。
第6回世界大会で優勝する八巻建志とギャリーは対戦し、その八巻をして「内臓を突き上げるような威力」とまで言わしめた突きがあったからこそ、延長1回にまでなったのは言うまでもありません。
八巻建志
結果的にギャリーは八巻建志氏に敗れ、4位になりましたが、この身長と体重でこれだけの偉業をやってのけたのですから、非常に天晴でしょう。
しかし、その偉業はあの技の強力さに拠ったとしか言えないのです。
確かに、彼のどこから飛んでくるかわからない多彩な上段蹴りも抑止力になったことは間違いはないけれども、それでも、技が強くないとそれはかなわない話しなのです。
それについて一切言及せずに、彼のトレーニング方法だけを掲載したら、空手について深く知らない人は、「これをすれば、自分は大丈夫なんだ!」などという誤解をしてしまう人が大勢表れても不思議ではないでしょう。
事実、松井派ではそういう誤解をしている選手が大勢いるのではないかと思われてはならないのですね。
「体を頑強にして、全技の強化」
これを基礎としつつ、テクニックやスタミナ、あるいはウェイトのトレーニングをしていかなくては、実力向上に頭打ちがきて、そのまま終わりというパターンになってしまうことは必至なことは間違いないでしょう。
そういうことがわかってない選手が多く見受けられるのは私だけの偏見でしょうか?
そのことをわからないまま上にあげたギャリーのトレーニング法を実践しても絶対に向上はしないことはお断りしておきます。
いな、実力向上の前に全然組手も上手くいかないで終わってしまうことも間違いありません。
その他、フランシスコ.フィリォ、数見肇、成島竜、グラウべ.フェイトーザ、いずれも世界大会での上位入賞者のトレーニング方法までこの増刊号では紹介していました。
それらの方法も、そのことをわからないまま真似しても組手で後退させられるだけですから注意が必要です(笑)
今回はこれにて失礼いたします。 ありがとうございました。