今回もノーマークの支部から、全国支部を牽引する強豪が出る、という関連で話をしたいです。
これは最終編ですが、これからまた未知の支部から強豪が出てくることは全然ありあえますから気兼ねせずに訓練を重ねていってほしいものです。
今回は、極真空手の広島支部ですね。
大山総裁の存命中は、広島支部からは強豪といえる人は限られていました。
この支部からは、山根誠治(ウェイト制軽量級優勝、準優勝、4位)や村瀬剛史くらいが強豪と呼べる選手でした。
村瀬選手は、95年の関東大会に出て3位になり、翌年の世界大会では4位になるから天晴ですね。
95年の初頭の極真大分裂時において、この支部の支部長である大濱博幸師範は、松井章圭氏と決別し、協議会派につき、2003年の新極真会へと正式名称を変更したときも、そのまま居続けました。
大濱博幸
しかし、山根と村瀬の2人の時代とは比べ物にならないくらいの強豪がでました。
いわずと知れた島本雄二ですね。
島本雄二
この人は、全日本ウェイト制、全世界ウェイト制、全日本大会、全世界大会と4つの大大会を制しグランドスラムを達成するのです。
師範の大濱師範も感無量といったところでしょうか?
島本を労う大濱師範
大山総裁存命中はほとんど強豪がいなかった。
しかし、今は日本はもちろん世界でも注目される強豪が出現した。
これは誰にも予想できなかったことですね。
こういった歴史を見るとやはり興味深いと思わざるを得ないですね。
島本選手は2012年の全日本大会を制し、全日本のエースとして2013年のワールドカップに出場するも、準決勝でリトアニアの強豪であるルーカス.クビリウスに正拳連打のラッシュを受け、大人と子供くらいの体力の差を見せつけられ完敗を喫しますが、それから2年後の全世界大会の準決勝で同じくルーカスと対戦し、これを手堅く降すのですね。
世界大会準決勝(ルーカスVS 島本)
それで、決勝に上がったのは同じ日本の入来建武。
日本人同士の決勝、これぞ世界大会のフィーナーレにふさわしい舞台でしょう。
ワールドカップでルーカスに完敗を喫したのは体力負けであることは明白でした。
それを克服すべく、体力をつけたのですね島本選手は。
ワールドカップ(2013年)で圧倒的な体力差でルーカスに敗れる島本
何も空手界全体が高度にそしてテクニカルになったからとて小難しい理論が先にありきでは実力の向上などありえないのですね。
格闘技は合理的なもので相手の攻撃よりも先に、そして強く当てれば勝てるのです。
それを難しく、間合い操作だの、距離だの、角度などといった理論を先にありきで指導していては、受ける側は混乱になり、難しく難しい印象を与えるだけに終わってしまうのです。
そういったものが正論であるに違いはありませんが。
新極真会の世界大会と同じ年に行われた極真会館松井派のエースとして出場した荒田昇毅選手の組み手を見れば明白でしょう。
彼はパワーはあるけれども、スピードと捻じ込むような威力がないために、相手の攻撃のほうが先に自分にあたり、自分のほうがダメージに蝕まれてしまうのです。
ダルメンにスピードと威力で劣り敗北を喫する荒田昇毅
「攻撃は最大の防御なり」という言葉通り、相手よりも速く威力のある攻撃を繰り出せば勝利をよぶことができるのです。
難しく考える必要は全くないのです。
あの年の世界大会では、日本人が2人しか入賞できませんでしたが、あの島本選手が出場したら…大濱師範が松井派の方に居続けたら…ということを考えてしまった人も多くいるのではないでしょうか?
しかしそれはちょっと早計でしょう。
人の空手における成長は、指導する側からの情報、周りの人からの情報、雰囲気、情景といったものに左右されるのであって、人の資質だけではないのですね。
もし松井派に大濱師範が居続けていたとしても、松井派の機関紙である『ワールド空手』ではテクニカルなことばかりで、多くの人を鼓舞するようにはなっていないのですね。
指導する人もそういう機関紙から大きく影響を受けて指導します。
ですから、大濱師範が松井派に居続けたとしても、島本選手があのような強豪に育ったかどうかは疑わしいのですね。
あの2013年のワールドカップで大敗北を喫した時、重量級のみならず全階級でも外国人が優勝しました。
今度こそ世界大会も日本人が優勝するのは無理だろうと思っていました私も。
しかし、2015年の世界大会では、島本vs 入来という日本人対決を実現し、のみならず日本人は計4人が入賞できました。
世界大会決勝(2015年 新極真会)
これは新極真の日本人選手全体に楽観主義が蔓延しているからでしょう。
シンプルに考えることで、やる気が出て修練をやりこなし成長する、ということです。
体力で負けていたのであれば自分に体力をつければいいだけのことことです。
スピードが劣っていて相手の攻撃が先にあたってしまうのなら、もっと速く動いて攻撃を出せるようになればいいだけです。
なのに距離がどうたら、つなぎがどうたらといったことを解説していては解決から遠のくだけです。
そういったものも大事なことに違いはないですが…。
難しく難しい理論が先にありきでは、だれもやる気を起こさず、決まった少数人しか稽古に励まず、ゆえに全体にもやる気のなさが蔓延し、ひいては全体のレベルアップも望めないのですね。
そういった楽観主義を与えることが何よりも大事なのですね。
楽観主義とは楽に強くなれるということではないですからお断りしておきます。
「肉体的に大変だけれども、稽古を修練を地道に続けていれば自分でも強くなれるんだ!」という希望を持たせるということですね。
そうなれば、だれもがやる気を出して稽古に精を出す。
すると先輩や指導員の人間もうかうかしていられない。
後輩以上の修練を重ねないと抜かれてしまうと思い、更に修練に励む。
そうでないと先輩や指導員として見本にはなれないです。
帯が上がれば上がるほど修練の時間は増えていく…これこそが、もっとも望ましい人間像ではないでしょうか?
しかし、松井氏は、自分の派に島本選手のような選手がほしいと思っているのではないでしょうか?
松井章圭
松井派の世界大会では3回連続して外国人が優勝していますからね。
自分が館長になりたての頃は、大濱師範の元には島本選手のような選手がいなかっただけに、予測不能なのことだったでしょう。
だが島本選手のような選手を出すためには、今の姿勢を改めないとだめでしょう。
指導の内容だったり、人事のことだったり、組織運営にあたっての金銭のことだったりと課題は多いですね。
今回は、これにて終了いたします。
ここまで読んでいただきありがとうございました。